結論から言おう、
「患者とコミュニケーションをとれない医師は開業するべきではない!」
そういう私も、大学病院での勤務医時代、流れ作業的な外来に慣れてしまい、患者とのコミュニケーションの重要性を忘れてしまったことがある。患者をさばくことが仕事の中心となっていたのだ。だが、恐ろしいことに当時は流れ作業をしているつもりも、さばいているつもりも毛頭なかった。正直に言うと、コミュニケーションの質を上げることなど、考える暇が無かったのだ。
しかし、患者とのコミュニケーションの量、質の向上と比例して上がることが数々ある。
そう。つまりは、コミュニケーションは医院経営の成功のセオリーなのである。
私が大学病院勤務のころ、他業界のマナー講習の講師が、患者を「患者“様”」と呼ぶことを当たり前のごとく言い放った。私には全く受け入れることができない。
例えば、会計業務という限られたセクションで、事務員が患者を「〇〇様」と呼ぶことには抵抗感を感じない。しかし、私の実家のある地域の患者に「〇〇様、今日はどうなさいましたか?」などと言おうものなら、「先生、熱あるのとちゃいまっか!」と言われるのが関の山だ。いや、なにも敬語が悪いと言っているのではない。患者とのコミュニケーションを取るのに敬語が邪魔になる時だってあるのだ。
大切なのは患者と質の高いコミュニケーションを取り、質の高い信頼関係を築くことなのだ。医院の開業は地域社会との密接なコミュニケーションが成功の鍵なのである。いつも明るい挨拶をする、患者の目を見て話すなど、人として当たり前なこと、しかし大切なことを実践してほしい。
我々医師はある意味、技術屋だ。技術屋が陥る失敗のひとつに、技術屋たるプライドから過度な設備投資をすることがある。しかし、開業の成功は、医療機器のレベルで決まるものではない。
まずは、考え得る最低限の医療機器で開業するべきだ。我々技術屋は、技術を裏付ける医療機器にあまりにも頼り過ぎている。
開業してつくづく思うことだが、成功は医療機器の質ではなく、コミュニケーション能力だ。医師の仕事は、病気を診ることではなく、人を看ることから始まるのだ。